日溜まりの中で/はじめ
 
 三月上旬の日溜まりの中は
 時間の経過を感じさせない
桜の花はまだ咲いていない
 僕は記憶喪失で
 この日溜まりと十二月上旬の日溜まりの違いを見出せない
 君は何処に行ったんだろうか
 君だけを忘れていない
 頭の中は君のことで一杯で ぐるぐると回っている
 君の顔も思い出せないのに
 君のシルエットだけを追いかけている
 桜舞う木の下で 僕は君を追いかけている
 僕は自然に涙が零れてくる
 日溜まりの中に涙が落ちて 静かに波紋を広げた
 延々と続く絶望しかない
 この日溜まりに急に疎外感を感じるようになった
 部屋には夕日が射し込み 段々と暗くなっていった

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