吾輩は病人である。病名はまだない。/ななひと
 
つ剤と、SSRIの中でも当時新しく認可されたパキシルという薬をくれた。一週間後、身体に電気が走ったように私はよみがえった、気がした。太陽を見るだけでうれしくなった。治った、と思った。
しかしうつ病はそんなに簡単ではなかった。もう一週間すると、薬はすぐに効かなくなった。効かなくなると、今度は毎週のように医者に通った。薬が欲しかった。薬が効いたときの、あの、爽やかな感じをもう一度味わいたかった。そうして様々な薬を試した。そのうち私は薬に興味を抱くようになり、薬の勉強を始めた。日本は発明された薬をなかなか認可しない。なぜなら安全性が保証できないと困るからだ。かといって人体実験をするわけにもいかない。海
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