不機嫌な五百円玉/ぽえむ君
五百円玉は機嫌が悪かった
カチャリと投げ込まれた
小銭入れの中には
たくさんの硬貨がいた
その中でも五百円玉は
一番格が上なので
一番大切にされなければならない
五百円玉は小銭入れの中を
ざっと見渡して
他に五百円玉がいないことを
確認できると最初は安心した
自分が一番上
きっと重宝されるに違いない
そう確信した時だった
錆びきった十円玉と顔があった
何だこいつはと眼を飛ばしてみると
その十円玉は通称
「ギザ十」で知られる有名人だった
側面がギザギサと刻まれている
今ではちょっと珍しい硬貨
五百円玉はどこかバツが悪かった
値打ちは確かに自分が上だが
硬貨仲間の人徳ではこいつには勝てない
かといって今さら頭を下げるのは嫌だ
小銭入れが揺れる度に
酸化した銅がくっつく
まるでそれは
ギザ十の垢を煎じて
飲まされているかのようだった
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