倒れる/石瀬琳々
 
倒れる
水差しが
ふとしたはずみで指先に触れ
ゆっくりと音もなく
まるで夢のように


倒れる
デイジーの花弁(はなびら)が
こぼれた水の上に散らばって
白い沈黙
切なさに似て


その花に心を寄せたばかりに
花は無残にも崩れ落ちた
指先でデイジーをつまんで唇に寄せる
黄の花粉が
哀しみのように染みついてはなれない


倒れる
どうしようもなく
ふとしたやさしさで指先が触れ
抗う術もないまま
まるで夢のように


あなたに心を寄せたばかりに
私は



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