風の中の絵本/
ぽえむ君
何も描かれていないその絵本は
風の中にあった
ミルク色をしたその紙の上に
風が運んだ川のせせらぎの音を
優しくのせてゆく
絵本の中では
水は静かに海へと流れてゆく
絵本の右上から小鳥のさえずる声が
聞こえてくる
左下には大きな風車小屋の
心地よい規則正しいリズムが
ゆっくりとしながら絵本全体に
染み込んでゆく
風の中の絵本を
空と雲と太陽が眺めている
風が絵本のページをめくる
今度は花の匂いが
絵本の中でいっぱいになった
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