角のない消しゴム/ぽえむ君
 
角のない消しゴムは
捨てられる寸前だった
角があろうとなかろうと
同じ材質なのに
四つの角があるとないだけで
大きな差をつくっていた
丸みの部分にはすれたえんぴつが
くっついていて
手で握るところは変色して
黄色くなっている
それでも消しゴムは生きている
むしろ消しゴムはそう生きるのだ
何も使われていないものが
経験の多いものよりも
選ばれてしまう
角がなくなったのは
それだけ役に立ってきたのだ
身をすり減らして
汚れきったものよりも
まだ何も削られていない
無垢の方が都合がいいらしい
角のない消しゴムは
すっかり肩を落として
筆箱の中で
自分では自分を消せないことを
ひどく恨んだ
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