ジプシー/水在らあらあ
行かないで、お願い
そう言って小さな女の子が俺の手を引いた
夕暮れ 海に落ちてゆく日は
どうしていつもあんなに決定的に
強烈に
美しいのか
海辺の教会から
八時の鐘が鳴り響いて
君は真っ黒な目で
俺を見つめている
俺は水平線を見ている
もう一回瞬きしたらきっと
燃え上がるぜ なあ あれが世界の切れ目さ
ジプシーの君は
真っ黒な目で
真っ黒いおさげで
俺の手をにぎる君の手は小さくて
俺はその手をにぎり返して
水平線から君に振り向く俺の目は茶色く滲んでいる
もっとお話して、お願い
波打ち際を逃げるひらめの話を
ここ
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