奇眼(Odd eye)/佐々宝砂
 
蝋梅の溶けゆくさまは蝋に似ず

春眠や豪華三本立ての夢

啓蟄や朝日を浴びて我眠る

流し雛流さず焼きぬ空に舞へ

この土はまだ生きてをり下萌ゆる

龍天に上る日を違へはせぬか

卒業の思ひ出知らず泣きてみむ

冴返る記憶の空もこの空も

Summertime Blues 聴けども聴けども春の宵

くちびるにくちびるで塗る春の新色

ポジティブとネガティブ一つ鍋で煮る

時実新子追悼
夫殺すことなく我の時実らむ

髪切りぬ三寒四温の三の日に

春宵のカフェインよ何目覚めさす

貫かれ窓の外にも春の雷

夜の春雨に濡れただけただそれだけ

解氷を映して君が奇眼(オッドアイ) 

ただ生きよただ生きよ虫たちよ春


[グループ]
戻る   Point(7)