借金返済/ぽえむ君
 
彼は莫大な借金をした
その時の彼は若かった
生活に困っての借金ではなかった
きちんと働いていて
収入はむしろ安定していた
それでも彼は借金をした
彼は将来への確実に
不安を抱いていた
だから彼は借金をした
そのお金は全て
自分に使うのではなく
その街に寄付した
彼に残ったものは何もなかった
あるのは多額の借金証書だった
彼は毎月働いては少しずつ返済した
思わぬ出費で生活を脅かされることもあった
それでも彼は工面して返済した
借金の返済は彼の人生の一部分になった
寂しい気持ちもあったが
何も変化のない人生よりも充実していた
何よりも返済は街に寄付した証でもあった
生活に苦しくなった時
耳にする音楽は勇気を与え
絵画は心を和らげ
文学に涙を流せるようになった
それはまさに人生の返済でもあった
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