平和な一日/ぽえむ君
その竹薮の中は時が止まっていた
動いているものは風と
竹の軋む音だけ
空を見上げれば
青空の中を積雲が静かに流れる
心の中では
懐かしいオルゴールのメロディーが
小さく流れている
理に沿うことよりも利に合う生き方を
求められる世界から離脱したこの空間は
穏やかというよりもむしろ平和だった
苔むした古い石段は
一人の人間の苦悩を無と錯覚させ
新たな道を覚醒させる
この平和な世界の中では
動く自分も静の一部分でしかない
しかしそれは
一時のわずかばかりの安息であり
いずれは動の世界に戻らなくてはならない
竹薮の外に一歩踏みだす
時が動き始める
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