十年間/MOJO
とあるごとに
「為子の仕事をおまえが奪え。そうすれば給料も元通りにしてやる」
と言うのだった。私もその気になった。以来為子との心理戦が始まった。しかし私は劣勢のことが多かった。
そんなある晩、行き着けのバーから出た私は、小田急の終電で帰宅しようとしていた。乗車ホームに並んだ私は私と似た風体のサラリーマンとつまらぬことから諍いを起こした。その男の胸倉を掴み、思いっきり持ち上げると、背中がピシリと鳴った。駅員が駆けつけてきてその場はそれで収まったが、翌朝、私はベッドから起き上がれなくなった。なんとか電話のあるところまで這って行き、救急車を呼んだ。救急車はサイレンを鳴らしながら私を最寄の大学病
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