十年間/MOJO
 
ところにあり、拒んだ場合、辞めてもらうことになる、といわれた。私は躊躇なく退職する方を選んだ。
 蓄えのほとんどない私は家賃の安いアパートに引っ越すことにした。場所は東京の西側で、付近には多摩川が流れていた。その六畳一間のアパートに暮らしながら私は道路工事のガードマンの職を得た。収入は更に減り、生活のレベルは最低限度にまで落ちていった。
 そんなある日、建築会社で同僚だった男から電話がかかってきた。父親が死んで葬儀をするのだが、受付を頼まれてくれないか、と彼は言うのだった。断る理由もなかった。私は指定された日時に礼服を着て葬儀会場にでかけた。受付とかかれた張り紙がされた机に座っていると、かつて
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