階段/岡村明子
 
冷ややかな朝に
渡る風の行方を見つめていると
どこかで古いレコードが回りだす
草原の朝もやの中から
湿った石の階段が現れる
五段ばかりで
他には何もないのだが
時を経て少し苔むしたまま
草原の中に確かな存在となっている

これからゆこうとするどこか
のようでもあり
ここに来る前にいた場所
のようでもある
階段の先は
はじまりだろうか
終わりだろうか

いつしか昼がやってくる
人しかいない交差点の真ん中に立ち尽くす
風は渡らず
発散し拡散する息の中で
私はひとり
階段を上る

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