空の下、浮遊するドアに手をかけ/紀茉莉
 
私たちは無数の部屋みたいな透明な空間を、いくつもいくつもハシゴしているのかもしれない。

ある時期、ある期間、ドアを開けるように入り、そこで過ごす。そして、その部屋で過ごす時期が何らかの理由(夜になるとか、朝がきたとか、熱すぎるとか、寒すぎるとか、暗いとか、明るいとか理由はいくらでもある)で目覚まし時計みたいに終わりを告げると、幾度となく通ったその空間のドアを開けて、また別の空間、別の部屋へと移ろいゆくのだ。

空には、そんな無数の抜け殻みたいな空間が、ぷかり、ふらり、ふわり、いくつもいくつも漂っているのだ。
それで、あまりに移ろい行く心を持った時期とか、何も見えないくらいに感覚が閉じて
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