夕陽の詩人/ぽえむ君
晴れた日の夕暮れ
その詩人は必ず川原に現れた
夕陽を眺めては
気持ちを溶かし込みながら
一つの詩を生んでいった
ある時は静かに悲しく
ある時は力強い魂を
言葉を使いながら描いていった
人はみな
その詩人を夕陽の詩人と呼ぶようになった
どこに住んでいるのかは誰も知らない
毎日のようにいることでよかった
ある年の春先だった
夕陽の詩人は現れなかった
その日だけではない
次の日もその次の日も姿が見えなくなった
引越しをしたのだと
病気で入院したのだと
いろいろな噂がたったけれど
真相はわからなかった
少し寂しい気持ちで
川原に向かって立っていると
風からの便りが聞こえた
夕陽の詩人は夕陽になったのだと
空一面に広がる薄く赤い夕陽は
完成された一つの詩だった
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