四行未詩日記・二〇〇七年一月/ならぢゅん(矮猫亭)
 
災難か
ならば災難に逢うがよし、と
良寛を気取るにも才度が足らぬ

   なつかしさについて・六日

懐かしいな――ふとそんな言葉が口をつく
懐かしいね――返ってくる言葉に安らぎを覚える
でもこの目でじかには見たことのないはずの景色だ
本当はただ言葉に温もりたいだけなのかもしれない

   光あまねし・一四日

冬木立の向こう遠く秩父の山なみに夕陽がさしかかる
散り敷かれた落ち葉、子犬も少年もほの朱く照らされている
光あまねし――かつて草野心平がそう記した場所で
いまこの瞬間たしかに僕も無量の光に浴している

   出会い・二八日

冬の朝、夜空と朝焼けとが出会うあたり
家並みの向こう、二本の樹が並び立っている
二つの種子の出会い、その瞬間はいつのことであったか
出会いと出会いとの遭遇、この奇蹟はいつまで続くのだろうか
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