桃と月/シリ・カゲル
 
まだらな夕焼けが
きりっとした一本の藍色に
移り変わっていく、その頃
帰り道のファミリーレストランに
今日も大きな桃のネオンが点る

今日はごめん、どうしても
僕には行くことができなかった
携帯のむこうの友が弁明する

僕はそのままうちに帰る気がしなくて
道路脇のガードレールに腰掛けて
会話を続けている
ぼんやり店内を眺めている

密度の濃い冬闇に浮かび上がる
店内の温かな光
窓際の席に座っている
メタボリックな体格の男は
テーブルの上にたくさんの料理が並んでいくのを
嬉しそうに眺めていた
北京ダックから始まって
東坡肉
麻婆豆腐
担々麺 五目焼きそ
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