その街/知られざる/石田 圭太
 
目を閉じると
ざわざわとした瞼の光がある
生き死にとは関わりのない所で
夜に終わっている

大変な引力で
言葉が土に還っていく
無音とはそういったもので
雪でも降ったりするんだろうか

いい造花が咲いている
いい過去も咲いている
めくらの生命は
天国のような階段を上っている

そこではいちばん遠くにいって
それきり戻ってこなかったもの達が
今日もお互いに仲間はずれのまま
親しい挨拶を交わしている

そこではいちばん近くにあって
そのまま気付かれなかったもの達が
今日もお互いに仲間のまま
そっぽなど向き合っている

頭を垂らしたままで
すべてさよならを失うことを恐れている
下手くそに失いながらも
生まれ育っている

目を開けると
踏みつけた言葉はゆらりと形を保って
芽吹くには足りないものを
また探し始めている

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