静心なく/蒸発王
 

久方の            (日の光がのどかな春の日だ)
光のどけき春の日に       (それなのにどうして桜は忙しく散っていくのだろう)
静心なく           (もっと美しい桜の花が見たいのに)
花の散るらむ     紀友則 (巻二・春下・八四)



『静心なく』



母校の校長は
大の桜好きで
初めて校長になった50年前から
ひたすら
校内に桜を植え続けていた

染井吉野
八重桜
しだれ桜
山桜
寒桜
彼岸桜
高嶺桜

幾種もの桜を
正門に裏門に
校庭わきに中庭に
時には並木を作るように

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