影縫い/蒸発王
 
綻びをつくろうために
いつも
針と糸を持ち歩いている


『影縫い』


性分なのか
ほつれた影を見ると
どうにも放っておけない
影の形は
人によって様々だ


明るく快活な女の子が
蝙蝠の影と黙りこくって計算していたり

疲れて覇気の無いおじさんが
鋭い眼光を持つ鷹の影に守られていたり

大人しく何の特徴も無い少年が
人食い虎の影に食われかけている

多くの影は
生きることに擦り切れて
人と寄り添いながらも
虫食いになって
出来上がった其の穴ぼこに
人はたやすく堕ちていく
そして影は
そんな主人の姿を悲しそうに見つめるのだ

手負
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