セブンスター・ライツ/
高田夙児
ふうになれるのかな
そう思って 僕はDに断って
トイレに立つふりをした
Dは きっと僕の言い方が悪かったのか
すっと遠くを見て眼を瞬かせた
歩き出した僕はわざと目の前を過ぎた赤いセーターの女の
盛り上がった胸元に向けて
火を点けたセブンスター・ライツの煙を吐きかけた
階段を上がって扉をあけると
夜の冷たい空気が煙と一緒に咽喉に入ってきた
僕は昔 好きだった女の言葉を思い出し
残してきたDを少し思って 唇を噛んだ
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