境界線/芙架シギ
 
に背中を噛み付かれていたのだと思います
ですが、僕は覚えているのです
君の頬が朱色の陽に染まりきっていたことを
僕は君の背のそのまた後ろの
夕陽でなく電柱、
電線を見ていた
世界を割くような境界線のようなそれを
僕は見つめ、その存在を認めながら
君に接吻、を落とした

――君は知らないのでせう。僕の、願い事を

馬鹿らしいと笑われても構わないのですが
僕はあの接吻の際、
僕と君とがあの夜の闇に染められた
あの境界線に割かれませぬように、と
ただそれだけを願っていたのです
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