ショルダーバッグ/霜天
どこへ行こうか、と呟くと
どちらにでも、と君が返す
どこへでも行けるのが僕らなんだと
もう一度その声を聞いてみたくなる
とても、とても高いところから
世界が降りてきている
一番最初に出会った列車に乗ろうと決めていた
車窓がゆらりと、溶ける
行けるのなら、うんと遠くがいい
忘れてきたものよりも
忘れてしまったものの方が、多い
君のバッグには入りきらずに
僕の方にも振り分けながら
いつか
世界がもっと高かった頃は
辿り着ける道は抱けそうなほどだった
どちらへ、行けますか
響く空白が
今は、こんなにも
ショルダーバッグをいつの間にか
引き摺ってしまっている
何を重くなってしまったのか
こんなにも空白な世界で
次の駅に、滑り込む
循環される空気が
辿り着けるのなら
うんと、遠くがいい
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