赤 (さん)/容子
 
午後五時ちょうど
わたしは両足をひらきます

まぶたの向こう側で
色落ちた石壁に描いたあの人の姿が
ため息に吹きさらされて
薄れてゆくのを眺めます

そのたびに
西の空から一斉に
真っ赤な金魚の大群が
こちらへ

スカートの裾をひるがえしにやって来ます

制服のプリーツスカートを
両手でたくし
わたしは両足をひらきます

まぶたの向こう側で
薄れゆく石壁に宿したあの人の欠片が
速まる気息に合わせて
擦れゆくのを感じます

そのたびに
ひき千切れんと食い縛る
真新しい水門が
こちらで

ひらいた両足にくくった鈴を鳴らします

そのたびに
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