NOISE FLOOR/本木はじめ
 





請いびとたちの歌



アルペジオ響く深夜の室内に殺人事件のようなオレたち



見るだろうオレと出会ったその日暮れおまえの蛹の孵化した跡を



懐かしいひととおまえが思われることが嫌いなオレもまた夢



芸術家きどりのオレが射殺されひろがる赤い鮮血の空



オレたちが昔こひびとだった頃このおんがくもいつしか終はる



手にとればたちまち消える蛍雪おまえの闇の深さに沈む






こうふくな歌



口笛を吹くきみ大草原のなか加速してゆく世界を置いて



ふたりして裸足で走る花畑はなればなれになるまで今を



曇り空ばかりがつづく三月の夢の谷間でまどろむふたり



歩道橋わたるいつかのきみの目が見ていたビルが今は青空



会えない日ばかりが続くもうきみの描いた野原も枯野となって



出したきり仕舞い忘れたアルバムのきみの笑顔に注ぐ月光







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