写せなくなったカメラ/ぽえむ君
当時はもてはやされた
流行のデジタルカメラ
今では部屋の片隅で
勢いで買った専用のプリンタとともに
すっかり埃にかぶっている
電池も完全に切れている
プリンタに差し込まれたままの紙は
純白さはなく黄ばんでしまっている
何年間も放置され続け
家の者からは必要ないというよりも
忘れられた存在になっていた
ある豪雨の日
雷が近くで落ちた
写せなくなったカメラとプリンタは
その衝撃で作動した
軋んだ音とともに印刷されたものは
このカメラが最初に写した
この家の家族全員が集まった幸せだった
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