かすり傷/黒い鴉
命知らずな黒猫
いつもなにかとぶつかって
近づくものに牙を見せ
触れるものに爪をたてた
・
残した爪あとは
彼の生きた証
孤独すら恐れないことが
彼の勇気
・
恩知らずな黒猫
傷をなめてくれた白い猫
こんな傷
たいしたことないんだって
強がって でも笑った
・
なめてくれた傷跡は
彼女の生きた証
傷つける事をなにより恐れる
彼女の優しさ
・
世間知らずな黒猫
死んでいくのは首輪のない猫
追いかけられた二匹
残されたのは一匹
・
知ってしまった現実を
生き延びても 心と体に
傷が増えていくだけってこと
こんな傷
たいしたことないんだって
強がって でも泣いた
・
それを
世間がかすり傷だと思っても
彼にとっては
決して消えない致命傷
でもそれが彼女の生きた証
彼の生きる証
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