4×5 俳句篇/佐々宝砂
1)
ねじりんぼの花が咲いてる
あれはねじれていてこそ正常なので
まっすぐに伸ばそうとすれば折れてしまう
<惑ひつつ天を目指せしねぢりんぼ>
2)
梅雨どきの窓辺に身を乗り出して
傷口から漢字仮名交じり文をしたたらす
灰色の地面は私を吸いとってしまう
<叫べども真綿の壁よ桜桃忌>
3)
風が吹いてる
風は私の狭いアパートに吹きこんで
自殺する
<風吹かば実りし仔らの皆墜ちぬ>
4)
数字で呼ばれる子どもたちが
親しげに楽しげに数字を呼び合う
エンコードされた愛が闇を暖かく濡らしてゆく
<夜育つ子らよ密かに文交はし>
5)
火を吹く巨大ムカデが大量発生
非常階段はもうすっかり火の海
阿鼻叫喚のなか僕は恍惚と君を
<懐かしき破滅のほむら草いきれ>
(2000年ごろの作品)
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