子猫/三州生桑
ば、サッと山に帰ってしまふ。感謝するそぶりもない。
彼らは無頼の徒だ。彼らは人間を決して信用しない。私はさういふ彼らを愛する。
先日、お気に入りの四阿(あづまや)に行くと、既に昼寝中の先客がゐた。
居心地の良い四阿の争奪戦は、かなり激しい。
仕方なくその日は、キャンプ場の炊事場で本を読むことにした。
椅子と机があって快適だけれども、遊歩道に面してゐるので、散歩者から丸見えなのが少し難だ。
数頁繰るうちに、何やら音がした。
きゅう。きゅうきゅう。
樹々のこすれ合ふ音かと思ったが、私が舌をツッツッツッと鳴らすと呼応する。
炊事場の裏の、廃材置き場の中から聞こえてくる。
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