薄紅桜物語/三架月 眞名子
絶えたら、あの丘に咲く桜の木の下に亡骸を埋めていただきたいのです。
桜の君が毎夜訪れるあの木の下に。
今年の花が散って、あくる年のこの季節、
再び桜が咲く頃には、
わたくしの血と、桜の君への想いが花びらを、
あの真白な花びらを薄紅に染め上げ、
あのお方の上に降り注ぐでしょう。
そしてわたくしはずっとあのお方のお側に。
死が桜の君の時を止めるまでずっとお側に。
そして、
幾年も幾千歳も、
あの桜の色を絶やさぬように、あの木の下で眠り続けます。
いつかまた、桜の君と出会えることを夢見て。
どうぞわたくしの我儘を、
最後の我儘を聞き入れてくださいませ。}
―姫様・・・
わかりましたわ。
わたくしが必ず、
必ず願いのままに。
ありがとう。
まぁ、どうか涙などお流しにならないで。
わたくしは幸せ者なのですよ。
嗚呼、
本当に、わたくしはなんという幸せものなのでしょう。
もう思い残すことは何もありません。
私のただひとつの、
永久にただひとつの願いが叶えられるのです。
ありがとう。
本当にありがとう・・・
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