創書日和。炎 【ふろぎすとん】/佐々宝砂
 
我々の生命活動に大きな影響を與へる、
幻の素子、
マイナスの質量を持つもの、
反證可能性を持たぬ似而非科學の、
古式ゆかしく愛らしい結晶、
ふろぎすとんよ!
いま私の前にある樫と槇と楠と、
柿と幾らかの杉、
其れら木材と結合しやうとしてゐる、
ふろぎすとんよ、
燃えよ!
燃えよ!
炎、
其れは物質ではなく、
物體ではなく、
形あるものではなく、
只の現象に過ぎない、
だが夢想のふろぎすとんよ、
負のふろぎすとんよ、
おまへは其処にある!
非在のものとして!
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