ゆく春に/刑部憲暁
 
日曜日
春が冷たい手で触れるから
さわられたぼくは立ち竦む

でも 散ってゆくものを
追いかける道は見つからない
東京はどこもかしこも
アスファルトで
ぼくたちの走る土は
見当たらない

きのう おじいちゃんが話してくれた
「人は自分が体験することの意味を
 分かっているとは限らんからな」
きょうもぼくの掌に
舞い降りるものがある

ぼくの見た春だった
ぼくのうたった 春だった
だから ぼくが掌を吹くと
まだ春は揺れるでしょう?
あなたのところへも
春は流れて行きますか?

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