頭のないモデル/シリ・カゲル
そのモデルには
頭がなかった
世の中には
頭の中身がないモデルは
たくさんいるのだが
頭がないモデルは
史上はじめてだった
国内外のデザイナーたちは
頭のないモデルを
自らの作品にどう活かそうかと
知恵を絞った
あるデザイナーは
頭がなくなったぶん
全体的な重心を下方に落とした
ワンピースを発表し
別のデザイナーは
胸元が極端に開いたドレスで
頭のなさをカバーしようとした
しかしどれもこれも
小手先のテクニックばかり
なにより頭のないモデルにとっては
「そんなのぜんぜんおしゃれじゃない」
ということだった
そんなとき、稀代のデザイナーである
ドンファン小泉は
頭のないモデルの気持ちは
頭のないひとにしか
わからないのだという結論に至り
自らの頭を
すとん、と落とした。
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