おらあ悪党だすけ、/渦巻二三五
 
「おらあ悪党だすけ、地獄の閻魔様にも嫌われてなかなかお迎えが来ねぇ」
と元気に遊びに来ては、父によくこぼしていた祖父だったが
晩年はながいこと寝たきりだった
曲がったまま固まっていた脚のせいで棺のふたが閉まらなかった
なにか、たまらない気持ちになった
父が、ぐいとふたを押さえてようやく押し込めた
父はいつもそういう役目を引き受けてくれる人だ

閻魔様にも嫌われるような悪事とはいったいなんであったのか
おとなたちはみんな知っていたのだろうか
誰かにだまされて家や土地を失ったらしい、とは
おとなたちの会話からうすうす知っていた
呉服を商い田畑を耕し豚を飼っていた
田畑で鍛えた
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