蜻蛉、来たりて/北乃ゆき
一夜限りの戯れでも
君の手が私(わたくし)の乳房に触れた時
蜻蛉、来たりて
今、この恋は私(わたくし)の精神から羽ばたいて
現実のものとなりませう
くれないの紅を塗り終えて
赤く汚れたひとさし指が私(わたくし)に残る
蜻蛉、来たりて
あかく、あかく
汚れた私(わたくし)が横たわる
蜻蛉よ、
おまえの一生を
私(わたくし)は知っておきませう
だからおまえも
私(わたくし)の恋を知ってておくれ
流れる血と
痛む身体は
私(わたくし)のものか
蜻蛉のものか
蝋燭の火にゆらめいて
狂う姿は
私(わたくし)のものか
蜻蛉のものか
蜻蛉、来たりて
明日は塵と知りつつも
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