金色夜花/北乃ゆき
噛んだ乳房の
そのむこうにあったのは
金色の花でありました
時も音もない闇を愛して
腸を潰す手は僕のもの
そこに見えた
金色の花でありました
瞼を開こうと閉じようと
僕には闇しか見えないのだから
いっその事
眼を潰してしまおうかと
思ったりもしましたが
キラキラと、金の花びらが
舞い降りる
僕の眼は
まだ潰れていないと知りました
噛んだ乳首の
その向こうにあったのは
金色の花でありました
差し伸べられた手を振り払い
代わりに乳房に喰らいつく
僕の舌先が知ったのは
金色の花でありました
横たわる女の背中は
僕を愛するわけはないと
まざまざと伝えるのだけれど
柔らかな乳房の味は舌先に残り
金色の夜の花を
美しいと思う僕だけが
ただ
ひとり
取り残されていくのです
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