トマト/水町綜助
 
たとえば
晴天で
海沿い
海岸線
僕はモーターサイクルで
あなたは一艘の舟
並行して走る
僕は大陸を飛び跳ねるが
海原に出られない
あなたは七つの海を越えられるが
陸では乾いてしまう
平行して海岸線を走る
その一艘の舟の上から
蹴たてるモーターサイクルの上から
トマトを一つ
この世にたった一つのトマトを
投げあう
そのトマトは太陽のように熟れていて
みずみずしいけれどいまにもはちきれそう
だから
そいつを
潰さないように
落とさないように
滴らせないように
大事に
大事に
でもできるだけ早く
できるだけ早く
投げあう

手がひりひりと痺れ
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