春をうつ雨<18のprose-2->/ウデラコウ
 
目覚めると。針のように細い雨が
全てを彩るように 濡らしていて

僕の頬が 濡れているのは

きっと この雨のせいだ。と 自惚れてみる

再生を告げる雨は 停滞する僕に そっと そっと降りそそぎ
待ち侘びた 季節を 迎えにゆこうと
僕をいざなう

僕はと言えば 君を待たずに ココを飛び出してしまうことが 
どうにも許せなくて
無理矢理声を閉ざして まどろみに沈む

僕を誘う声は それからも 暫く続いていたような 気もするけど

僕は 頑なに 瞳を閉じた

何度目かの 夢現の後
ぼんやりと 見上げた空は それまでより
僅かに 穏やかな表情で
さかさまの僕を 見下ろしていた

その青に 僕は飛び起きて 窓を開け
西に顔を 向けると

さっきまで 僕を呼んでいた声は 何よりも
美しい輝きとなって 空を渡っていた

その姿に 静かに 微笑むと

僕は 君を迎えにゆく 準備を始めた
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