野原/佩慈の工人
 
よそ者は居場所を選べないので出口に着いたのは間違いかもしれない。窓越しに見る飛ぶ影に命の区別がなかったように、ぶつからずにはくぐれない空を首で抱えて、じくりとすべる頭にかぶった布の織目も知らないんだ。視線が合っても離れていく鳥の目指す場所、つれた糸が靴の裏についてくる午後の始まった頃も。湿った土に浮いている石ばかりが続く空き地の端で黒ずんだ切り跡から、測りたい長さを押し倒して春が来ている。
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