「あいつについて」/広川 孝治
 
俺はそいつをいつも馬鹿にしてるくせに
そいつが人から馬鹿にされると
いつも滑稽なほどムキになってそいつをかばうんだ





俺はそいつにいつも「当たって砕けろ、何事も」って言い聞かせてるくせに
いざ、ぎりぎり決着のところに来ると
いつも保身を囁くんだ、そいつの耳に





俺はそいつが何かを成し遂げるだなんて全く信じてないくせに
そいつが何かをしようとすると
いつもむなしい希望を抱いてしまうのだ、煙のように消える期待を





そいつが人を好きになったときだって
俺はその恋がまさか成就するだなんて思ってなかった

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