ロナの憂鬱/緑茶塵
岬の小屋の倉庫を改造した酒場で、ロナは働いている。
昔は母親も一緒になって仲良く働いていたのだが、とうの昔に魔法使いと家を出てしまって、今は一人だった。
ある日雨も降っていないのに、ずぶ濡れの男がやってきた。
酒場の一番端っこの、隅の門の席についた。
「床が濡れてしまうから、身体を拭いてくれないかしら」
ロナがそう言って、ぼろ布を差し出すと男は服を脱いで裸になり身体を拭き始めた。
ずぶぬれの男はよく見ると顔の良い男で、変わった耳飾りをしていた。
他の客がその男見ながら話し始めた。
「そいつは今朝方海の上を歩いていたんだ。おおかた修行中の若い魔法使いか何かだろう。海水に手
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