メメント・モリ/蒸発王
こんばんは
良い夜です
『メメント・モリ』
何時頃からか
死にたい気分になると
身体中から
黒い霧が立ち上るのが見えました
霧は
冷たく
緩やかで
僅かな潮の香りと
海を想わせる
あえかな
女性の吐息の感触で
包まれていると
安らいだ気分になれたのです
死というモノに姿を与えるならば
其の形は
僕にとっての
理想の女性だったのでしょう
そのうちに
自分以外の黒い霧も見えるようになって
親友にも
其の黒を感じた
翌日
彼は旅立ってしまいました
そんなことが何回も何十回続いて
僕を
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