限定/蒼木りん
誰かと話がしたくなって
「ねえ、こうやってくれない?」と
ぎゅっとした
ぎゅっとしてもらいたかった
つまり
それって
気持ちいいことだから
してもよければしてくれるし
嫌だったら
拒否されるだろうし
どっちかなって想像するのも
面白い
エレベーターの
たった20秒の間に
話はすれども
ぎこちない
距離は
保たれたまま
きっと疲れすぎて
理性もへったくれもない
べつに
もういいやって
感じ
背骨が
音がするくらい
「ねえ、ねえ?」
「お願い、こうやってくれない?」
ぎゅっと
扉が開いちゃうから
早くして
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