ごめん なさい/朽木 裕
 
吐き気がして目が覚める。
目覚めは無論最悪、だ。
身体が熱を持っていて体温計を手探りで探しながら思う。

こんな人間でも生きている。

熱を持っているものなぁ、この肉体が。
体内のなにかとちゃんと戦っている。

私はとうに外の世界に負けたというのに。

胃液の味が口腔内を占めて不愉快で、ならない。
視覚で美味しそうなご飯を捉えていても
それはもうすぐ私の吐瀉物に成り果てるのだ。

酷く、憐れだ。

誰が この食べものが それとも私が。

白くて人間の体温みたいにあたたかな便座を私は憎む。
こんなものに掴まりながら必死に咽喉を上下する。
無様だ。死に値する。
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