絵の中の、/LEO
 
画布一面に
描かれた椿の
色彩の深みは
凍えた空を思わせて
ひとすじの風にさえ
枝葉のさざめきが
聞こえてきそうであった
重なりあう緑葉の中に
たった一輪きりでも
咲き誇る花は
見逃しようもなく
首を傾げ微笑む
女のようである
艶めきと
はかなさと
妖しさと
つめたさと

触れてはいけない

私が賛美の言葉を吐けば
こくりと頷いて
熱い息を
漏らすのではないか
見ている
見られている
釘付けのまま
上気する頬
反転してゆく
内と外
目眩して
呼ぶ声
誰の、
誰を、



静寂に囚われた中
コツと響く靴音に
示された存在で
断ち切る視線

触れてはいけない赤の
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