真実/P.B.
雨の中、電線に止まって動かないカラスを僕は見ている
君はそんな僕を見ている
カラスは無言で、僕も無言、そして君も無言
しばらくしてカラスが飛び立って、その姿が視界から完全に消える
ぼくは、ゆっくりと君のほうに視線を向ける
カラスが遠くのほうでカァーと鳴いたかどうかはしらないが
しばらく僕と君は無言のまま視線を交わしていた
やがて、君が、カラスが去ってしまった電線のほうを向きながら言う
「何か真実っぽいことを言って」
「・・僕はゲイだ」
僕も、再び電線のほうに目を向ける
「うん、真実っぽいね。真実ではないけど」
雨の音がさっきより大きくなった
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