「林檎」/ベンジャミン
 


(不器用であることは

 罪ではありません)


林檎の皮をどれだけ長くむけるだろうかと
無邪気にはしゃいでいた頃に

途切れてしまった命はいくつ
あの赤い肌をすべっていったことでしょう


もしもあなたが
その赤い線のような林檎の皮に
儚さを感じる心を持っているのなら

いっそわたしは
赤い耳のウサギのかたちにして
あなたが美味しそうに食べるのを
嬉しそうに眺めていたい


だって ほら

この いろ
この かたち
まるで しんぞうみたいでしょ?


わたしけっこう器用なのよ
赤い耳のウサギつくれるもの

それがわたしの罪だ
[次のページ]
戻る   Point(3)