忘れて忘れないで/蒼木りん
 
寂しがり屋がどうしも
すきになれなくて
プイッとしてしまうから
気が付くと
わたしが寒い

満月と
見つめあう冬の夜は
ばかだった恋を思い出して
ため息をつく

そんな
無駄そうな時間を
灰皿に押潰して走り出す
有意義そうな方へ

わたしの一呼吸が続く限りの言葉で
気持ちを吐き出す 
すぐには伝わらない想い
ため息で捨てる
ぜんぶ恥ずかしい

また
ひとつ工場が閉鎖されて
この道の灯りが減って
夜って
こんな色

わたしはそれを眺めて
『寂しい』という言霊を
何度も聞く
『寂しい』という

寂しいと言われるのは
嫌い
わたしは
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