虚空に繁る木の歌   デッサン/前田ふむふむ
 
序章

薄くけむる霧のほさきが、揺れている。
墨を散らかしながら、配列されて褐色の顔をした、
巨木の群を潜ると、
わたしは、使い古された貨幣のような森が、度々、空に向かって、
墜落するという、眩いひかりを帯びた、
大きな門に、夕暮れのように、
流れ着いた。

門の前では、多くの老婆が、朽ち果てた仏像にむかって、
滾滾と、経文を唱えている。
一度として声が合わされることがなく、
錯乱した音階が縦横をゆすり、
ずれを暗く低い空にばら撒いている。
うねるように恍惚する呟きは、途絶えることがない。

わたしは、風船のように膨れた足を癒すために、

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