花散る里/ヴィリウ
 
笑つてゐてね。
だうか、御前。
何時の日も笑顔を。

花が散つてゆくよ。




空気が緩んで来たのを感じるか。
屹度まうすぐひらりひらりと、桃色の霞が舞ふよ。
御前の後姿のやうだね。
優しゐ、其の姿のやうだね。

春が来る度、屹度此の日を思ひ出さう。
風が桜に染まる度、屹度御前を想おう。



昨日は楽しかつたかい。
今日は健やかだつたかい。
明日は屹度素晴らしひ日だらうよ。

だから、ねえ御前。

笑つてゐてね。
何時の日も。
仕合わせを願つて。
わたしは、御前の為に祈るから。
だうか此の先幾歳でも、御前に安らかな笑顔を。
其の背に降り掛かる明日に、だうか美しひ希望を。





春に成る。

桜が舞ふ。

暖かひ風には桃色にけぶる霞が。




御前が笑つてゐるのなら、此の世は桃源郷のやうぢゃあないか。

解らぬかい。

愛を告げてゐるのぢゃあないか。

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